
「AIってなんだか難しそう…」
「ChatGPTを使ってみたけど、思ったような答えが返ってこない…」
そんな風に感じている方はいらっしゃいませんか?
実は、生成AIは、ほんの少しのコツを知るだけで、あなたの仕事を劇的にサポートしてくれる、最高の相棒(アシスタント)になる可能性を秘めています。
今回は、生成AIを使いこなす上で最も重要と言っても過言ではない「質問の仕方」、専門用語でいうところの「プロンプト」について、解説していきます。
この記事を読み終える頃には、「なるほど、こうやってお願いすればよかったのか!」と、AIとの対話がきっと楽しくなっているはずです。
AIは決して難しいものではありません。
その利用価値の高さを、ぜひ実感してください。
1. AIとの会話のコツ、それが「プロンプト」です

そもそも「プロンプト(Prompt)」とは何でしょうか?
難しく考える必要はありません。
シンプルに言えば、「AIへのお願いごと」や「指示」のことです。
例えば、誰かに何かをお願いする時、どう伝えますか?
悪い例:「ちょっと、あれやっといて」
これでは、相手は何をすればいいのか全く分かりませんよね。AIも同じです。
良い例:「〇〇さん、この会議の資料を明日のお昼までに10部コピーして、ホチキスで留めておいてもらえますか?」
このように具体的に伝えることで、相手は正確にあなたの意図を理解し、行動してくれます。
生成AIも、あなたが入力する「プロンプト」を元に、文章を作ったり、アイデアを出したり、画像を生成したりします。
つまり、プロンプトの質が、AIから得られる回答(生成物)の質を大きく左右するのです。
AIを「魔法のランプ」だとすれば、プロンプトは「魔法の呪文」。
上手な呪文を唱えれば、AIはあなたの願いを的確に叶えてくれる、忠実なパートナーになります。
2. 【基本編】これだけは押さえたい!良いプロンプトの3つのコツ

では、具体的に「良いプロンプト」とはどのようなものでしょうか?
ここでは、絶対に押さえておきたい3つの基本的なコツを、事例を交えてご紹介します。
コツ1:とことん「具体的に」伝える
AIは、あなたが頭の中で思っていることを察してはくれません。
できるだけ詳しく、具体的に情報を与えることが、良い回答を得るための第一歩です。
【ダメなプロンプト】
ブログ記事を書いて。
これでは、AIは何について、誰に向けて、どんな内容のブログを書けばいいのか全く分かりません。
きっと、非常にありきたりで、使えない文章が出てくるでしょう。
【良いプロンプト】
<ターゲット> 中小企業の経営者や、業務改善に関心のあるビジネスパーソン
<テーマ> 生成AIを導入するメリットについて
<内容>
・業務効率化(メール作成、資料作成など)の具体例を入れる
・コスト削減につながる点を強調する
・専門用語は使わず、初心者にも分かりやすい言葉で説明する<その他>
・記事のタイトル案を5つ提案してください
・文字数は1500字程度 ・読者が「自分でもできそうだ」と前向きになれるような、親しみやすいトーンで上記の条件で、ブログ記事を作成してください。
いかがでしょうか?
「誰に(ターゲット)」
「何を(テーマ)」
「どんな風に(内容・トーン)」
「どれくらいの量で(文字数)」
といった、いわゆる「5W1H」を意識して情報を加えるだけで、AIはあなたの意図を深く理解し、的を射た回答を生成してくれるようになります。
コツ2:AIに「役割」を与える(ペルソナ設定)
次にご紹介するコツは、AIに特定のキャラクターになりきってもらう「役割設定(ペルソナ設定)」です。
これにより、AIの回答の視点や口調(トーン)が定まり、より専門的で精度の高いアウトプットが期待できます。
【惜しいプロンプト】
以下の文章を、もっと分かりやすくして。 「当社の新しいSaaSは、革新的なアルゴリズムを実装し、既存のワークフローをシームレスに統合することで、企業のDXを加速させます。」
これでもAIは文章を修正してくれますが、誰にとっての「分かりやすさ」なのかが曖昧です。
【良いプロンプト】
あなたはプロのマーケティングライターです。以下の専門的な文章を、ITに詳しくない中小企業の社長にも魅力が伝わるように、キャッチーで分かりやすい表現に書き換えてください。
<元の文章> 「当社の新しいSaaSは、革新的なアルゴリズムを実装し、既存のワークフローをシームレスに統合することで、企業のDXを加速させます。」
このように「プロのマーケティングライター」という役割を与えることで、AIは「専門用語を避けよう」「メリットを具体的に伝えよう」「読者の心に響く言葉を選ぼう」と考えながら文章を生成します。
<AIの回答例>
「御社の面倒な事務作業、まるっと自動化しませんか?当社の新サービスは、今お使いのやり方を一切変えることなく、驚くほど簡単に導入できるITツールです。社員の皆さんの負担を軽くし、会社全体の仕事のスピードをぐんとアップさせます!」
役割は他にも、
「経験豊富な経営コンサルタント」
「凄腕のプログラマー」
「親身なキャリアアドバイザー」
「ユーモアあふれるコピーライター」
など、目的に応じて自由に設定できます。
ぜひ試してみてください。
コツ3:「条件」や「ルール」を付け加える
AIは非常に自由な発想をしますが、時にはそれが的外れな回答につながることもあります。
そこで有効なのが、「条件」や「ルール」を設けて、AIの思考の範囲をコントロールすることです。
【漠然としたプロンプト】
新しいカフェのメニューのアイデアを出して。
これでは、和風、洋風、ドリンク、スイーツなど、様々なアイデアが脈絡なく出てきてしまい、絞り込むのが大変です。
【良いプロンプト】
あなたは人気カフェの商品開発担当者です。 女子高生をターゲットにした、夏限定の新作ドリンクのアイデアを10個、箇条書きで提案してください。
<守ってほしい条件>
・「SNS映え」するカラフルな見た目であること
・一杯あたりの材料費は300円以内に収めること
・フルーツを必ず使うこと
・チョコレート系の材料は使わないこと<出力形式> ・商品名 ・簡単な説明 ・アピールポイント
「箇条書きで」「10個」といったフォーマットの指定や、「材料費は300円以内」「チョコは使わない」といった制約(ルール)を設けることで、AIはあなたの求める方向性に沿った、質の高いアイデアを効率的に生み出してくれます。
3. 【応用編】もっとAIを使いこなす!ワンランク上のプロンプト術

基本の3つのコツをマスターしたら、次はもう少し高度なテクニックに挑戦してみましょう。
これらを使えば、AIはさらにあなたの意図を正確に汲み取り、驚くような成果を出してくれます。
テクニック1:お手本(例)を見せる
AIに「こんな感じのものが欲しい」というお手本(例)をいくつか見せることで、AIはそのスタイルやフォーマットを学習し、似たようなアウトプットを生成してくれます。
これを専門的には「Few-shotプロンプティング」と呼びます。
【プロンプトの例】
以下の例を参考にして、新しい電動アシスト自転車のキャッチコピーを作成してください。
# 参考例
例1: ・商品:高機能マットレス ・キャッチコピー:毎朝が楽しみに変わる。雲の上で眠るような心地よさを、あなたに。
例2: ・商品:オーガニック野菜ジュース ・キャッチコピー:太陽の恵みを、ゴクリ。体の中からキレイが目覚める一杯。
# 作成のお題
・商品:通勤用の電動アシスト自転車 ・キャッチコピー:
こうすることで、AIは「単なる機能説明ではなく、利用シーンや感情に訴えかけるようなコピーを作ればいいんだな」と理解し、質の高いキャッチコピーを提案してくれます。
テクニック2:「ステップ・バイ・ステップ」で考えさせる
複雑で大きなテーマについて質問する時、一度に完璧な答えを求めようとすると、AIが混乱したり、内容が薄くなったりすることがあります。
そんな時は、思考のプロセスをいくつかのステップに分解して、順序立てて考えさせるのが有効です。
【プロンプトの例】
あなたは優秀なイベントプランナーです。 当社の創立10周年記念パーティーの企画を立てたいです。 以下のステップに従って、順番に考えて提案書を作成してください。
ステップ1: イベントのコンセプトを3案、簡潔に提案してください。(例:感謝、未来、一体感など)
ステップ2: ステップ1で提案したコンセプトの中から1つを選び、そのコンセプトに基づいた具体的なコンテンツ(出し物、食事スタイルなど)のアイデアを5つ出してください。
ステップ3: 東京都内で、100名規模のパーティーが開催可能な会場の候補を、特徴と概算料金を含めて3つ挙げてください。
ステップ4: 上記を元に、全体の概算予算を項目別に算出してください。
このように指示を分解することで、AIは一つ一つのタスクに集中でき、最終的に網羅的で質の高い企画書をアウトプットしてくれます。
テクニック3:諦めずに「対話」を続ける
一度で100点満点の答えが返ってくることは稀です。
大切なのは、最初の回答でがっかりせずに、AIとの対話を続けることです。
- 「ありがとう。そのアイデア、すごくいいね!もう少し具体的に説明してくれる?」
- 「5つ提案してもらったけど、もっと斬新な視点はないかな?別の切り口で考えてみて。」
- 「全体的に良いけど、もう少しフォーマルな言葉遣いに修正して。」
- 「その説明だと専門的すぎるから、小学生にも分かるように例え話を入れて説明して。」
このように、追加の質問や修正のお願いを重ねることで、回答の精度はどんどん高まっていきます。
AIは前の会話の内容を覚えています。
AIを「一回きりの検索エンジン」ではなく、「対話ができるアシスタント」として捉え、根気強く育てていく感覚を持つことが大切です。
4. 【実践編】仕事のこんな場面で使える!プロンプト事例集

最後に、実際のビジネスシーンでそのまま使えるプロンプトの例をいくつかご紹介します。
ぜひご自身の業務に合わせてアレンジして使ってみてください。
<営業・企画で使えるプロンプト>
- 取引先へのメール作成あなたは株式会社〇〇の営業担当です。先日お会いした△△物産の□□部長へ、打ち合わせのお礼と、本日お電話でお話しした新商品Aの企画書を添付したことを伝えるメールを作成してください。来週、改めてご説明に伺いたい旨も、丁寧な表現で追記してください。
- プレゼン資料の構成案作成「中小企業のDXを加速する!新しいクラウド会計ソフト」というテーマで、30分のプレゼンテーションを行います。聞き手は経理担当者ではなく、ITに詳しくない経営者層です。導入(課題提起)、本論(解決策とメリット)、結論(導入の呼びかけ)の3部構成で、各パートで話すべき内容の骨子を箇条書きで作成してください。
<開発・技術で使えるプロンプト>
- プログラミングのコード生成あなたはPythonの専門家です。pandasライブラリを使って、'sales.csv' という名前のCSVファイルを読み込み、'日付' 列を元に月ごとの売上金額を合計し、結果をグラフで表示するコードを書いてください。グラフにはタイトルと軸ラベルも付けてください。
- エラーの原因究明以下のJavascriptのコードを実行すると、コンソールに
TypeError: Cannot read properties of null
というエラーが表示されます。このエラーが発生している原因と、具体的な修正方法を分かりやすく教えてください。(ここにエラーが出ているコードを貼り付け)
<事務・バックオフィスで使えるプロンプト>
- 社内アナウンスの作成全社員向けに、来月実施されるオフィスのレイアウト変更について、事前告知する社内通知を作成してください。目的(コミュニケーション活性化のため)、変更スケジュール、事前の荷物整理のお願い、といった要素を盛り込み、社員が前向きに協力してくれるような、明るく丁寧なトーンでお願いします。
- 議事録の要約以下の会議の議事録を500字以内で要約してください。特に、「決定事項」「今後のタスク(TODO)」「担当者」「期限」が明確に分かるように、箇条書きで整理してください。(ここに議事録のテキストを貼り付け)
まとめ:プロンプトはAIとの「対話スキル」
今回は、生成AIを使いこなすための「プロンプト」の基本から応用までを解説しました。
- コツ1:具体的に伝える
- コツ2:役割を与える
- コツ3:条件・ルールを加える
まずはこの3つの基本を意識するだけで、AIから返ってくる答えが劇的に変わるはずです。
上手なプロンプトは、単なる「命令」ではなく、AIとの「上手な対話のスキル」と言えるかもしれません。
最初から完璧なプロンプトを作ろうと気負う必要はありません。
まずは色々試してみて、AIとの対話を楽しみながら、その精度を高めていくプロセス自体を楽しんでみてください。
生成AIは、あなたの指示を待っている、非常に優秀で素直なアシスタントです。
上手に「お願い」するスキルを身につけて、日々の仕事をもっと楽に、もっとクリエイティブなものに変えていきましょう!